代表 髙橋 智子さん
人と自然とアイデアが交差する場所。いすみ市「NANSO CAMP」が描く、新たな地域のカタチ
いすみ市ののどかな風景の中に、ひときわユニークな空気を放つ場所がある。その名は「NANSO CAMP」。元は縫製工場だったという広大な建物をリノベーションした、キャンプ場とスタジオを併設する複合施設だ。運営するのは、髙橋さん。太陽のような明るい笑顔と、次々とアイデアを形にしていくしなやかな行動力が印象的だ。偶然の出会いから始まったこの場所が、今、地域の人々と移住者、そして都市部から訪れる人々をつなぐハブとして、新たなコミュニティを育んでいる。彼女の言葉から、その魅力の源泉と未来への展望を探った。
偶然の出会いから始まった、元・縫製工場のリノベーション
──本日はよろしくお願いします。まず、この「NANSO CAMP」を始められた経緯について教えていただけますか?
もともとこの建物は、縫製工場だったんです。私たちが購入した時には、ミシンがたくさん並んだまま、20年くらい使われていない状態でした。最初からキャンプ場やスタジオをやろうと決めて買ったわけではなくて、「何か面白いことに活用できるかもしれない」という直感からでした。
ちょうどその頃、趣味でキックボクシングを習っていて、周りの友人たちも興味を持ち始めていたんです。「じゃあ、ここにスペースがあるから先生を呼んで、みんなで教室を開いてみようか」となったのが、最初のきっかけですね。そこからヨガやフラダンスのクラスも始まって、少しずつ人が集まる場所になっていきました。
──キャンプ場はどのようにして生まれたのでしょう?
建物の外には手つかずの庭が広がっていて、特に使い道も決まっていなかったんです。当時はアウトドアがすごく流行っていた時期で、「ここ、キャンプ場にできるかもしれないね」なんて話になって。ものづくりが好きな父と一緒に相談しながら少しずつ整備して、今の形になりました。本当に、その時々の思いつきとご縁でできあがってきた場所なんです。
「ちょうどいい」が魅力。都会と自然をつなぐキャンプ場
──NANSO CAMPならではの強みや魅力はどんなところにあると感じていますか?
お客様からよく言っていただけるのは、アクセスの良さですね。都内からも来やすいですし、山奥すぎないので、何かあった時にすぐ近くに病院やスーパー、コンビニがある安心感も大きいようです。それでいて、敷地に一歩入ればちゃんと自然を感じられる。虫があまり出ないことも、ファミリー層には喜ばれていますね(笑)。
あとは、やっぱり露天風呂でしょうか。特にゴルフ帰りの方が立ち寄ってくださることもありますし、小さなお子さん連れのご家族にも「貸切だから気兼ねなく入れる」と好評です。
──昨年、子供会で利用させていただいたのですが、本当に快適でした。上の部屋も使わせていただけたので、夜更かししたい子と眠たい子で場所を分けられて助かりました。
そう言っていただけると嬉しいです。 全館貸切で使っていただけるので、グループでの利用にはぴったりだと思います。子供たちがすぐ近くで遊んでいるので、親御さんたちも安心して過ごせますしね。何かあってもすぐに駆けつけられる距離感というのは、この場所の大きなメリットだと思っています。
人が集い、輪が広がる。地域に開かれたコミュニティ拠点へ
──マルシェのイベントを開催されましたね。地域の方々との関わりも深いように感じました。地元の方もたくさんいらっしゃっていましたね。
そうですね。いすみ市で活動されているぐるぐる市さんが使ってくださったことがきっかけで、マルシェのイベントが開催されました。先日の「NANSOfestival」は主催することがはじめてでしたが、ぐるぐる市さんのおかげで大盛況に終えることができました。
イベントをきっかけに「こんな場所があったんだね」と知ってくださる地元の方も多いです。先日のお祭りに「友人に誘われて初めて来た」、という方もいらっしゃいました。地域の方々が気軽に立ち寄れる場所になっているのは、とても嬉しいことですね。
実は、キャンプに来てくれたお客様が「いすみ市っていいね」と移住を検討し始めて、今まさに土地を探している、なんていうケースもあるんですよ。この場所がきっかけで、いすみ市のファンになってくれる。それが一番のやりがいです。
──今後の展望について、何か考えていることはありますか?
スタジオが空いている時間をもっと有効活用したいなと考えています。例えば、曜日を決めて「解放日」みたいにして、誰でも自由に運動したり、おしゃべりしたりできる場所にできないかなって。地域の方々が集まれる、ちょっとしたコミュニティスペースのような役割が担えたら素敵だなと思っています。
地域と共に未来を描く。これからのNANSO CAMPが目指すもの
──運営する上での課題はありますか?
一時期の爆発的なキャンプブームが少し落ち着いてきたので、これからはキャンプだけに頼らない新しい魅力も作っていきたいと思っています。その一つが「手ぶらでキャンププラン」ですね。道具を持っていなくても気軽にアウトドア体験ができるように、サービスを充実させていきたいです。
──地域との連携についてはいかがでしょう。
最近、近隣のキャンプ場の方からお声がけいただいて、災害時に協力しあう体制を作れないかという話を進めています。避難場所として機能したり、防災体験イベントを開いたり、地域に貢献できることがもっとあるはずだと感じています。
また、もともとキャンプ場にお客様としてきてくださったご夫婦がアンバサダーとなり、私たちの活動をSNSで発信してくださっています。そのご夫婦が最近、NANSO CAMPを訪れた方々におすすめの周辺スポットを紹介する動画を作ってくれたんです。カフェや直売所など、地域の魅力を伝えることで、いすみ市全体がもっと盛り上がっていけばいいなと思っています。
また、そのご夫婦はいすみ市を気に入ってくださっていて、「いつかいすみ市に住みたい」とおっしゃってくださっています。イベントの際にはスタッフとして手伝ってくださっています。
──最後に、地域の方々やこれからNANSO CAMPを訪れる方へメッセージをお願いします。
移住してきた方が「仲間が欲しい」と感じた時、ここに集まる人たちとの出会いがそのきっかけになれば嬉しいです。私たちはいつでもウェルカムなので、イベントでも、お風呂だけでも、ぜひ気軽に遊びに来てください。そして、いすみ市を選んで移住してきてくださった方々には、本当に「ありがとう」と伝えたいです。この場所が、皆さんの日常を少しでも豊かにするお手伝いができたら、それ以上の喜びはありません。