文字変更

  • 標準

背景色

「POPでお客さまを楽しませる」地域密着スーパーの秘密

株式会社 おおたや スーパーランドいすみ店
営業部長 波多野 雅記さん

千葉県いすみ市にある「スーパーランド」。
一見すると普通のスーパーですが、売り場に足を踏み入れると、にぎやかでユーモアあふれるPOPが目に飛び込んできます。そこには、地域の人々に愛される秘密が隠されていました。今回は波多野店長に、その魅力の源を伺いました。

商品選びと売り場の工夫
注目すべきは、売り場を彩る手書きPOP。そこにはスタッフの率直な感想やエピソードが並びます。セミナーに参加しPOPについて学びました。そこで勉強したことがきっかけで、お店でPOPの勉強会をやりました。
「実際に食べて美味しかったものを、自分の言葉で伝える。だからこそお客様に響くんです」と店長。
他に売っていない変わった商品を置いても誰も気づいてくれず、最初はまったく売れなかった商品も、スタッフ自ら試し、POPに思いを込めることで人気商品に育っていきました。今ではテレビで紹介されるほどの存在感を放っています。
主婦の方や共働きの方が増えていて、毎日献立を決めて買い物して、すごく大変なので、せめてスーパーランドに来たら楽しんでもらえたらいいな、という思いで、楽しい企画を考えています。ハロウィンの時期なので、スタッフみんなカチューシャを頭に付けていますが、はじめはお客様に驚かれたのですが、今では浸透してきましたし、スタッフの中には自ら自分用のカチューシャを用意するなどして楽しんでくれています。そういう取り組みをやり続けることで、スーパーランドって何かいつも面白いことをやっているお店なんだよ。という印象強いお店にしたいです。ただ売るのではなく、初めて見る商品を手に取っていただけるようにしっかり情報をお客様に伝えるためにも、食べた人の感想であったり、商品の使い方だったりを楽しく選んでいただけるように工夫しています。そして、POPをきっかけに食卓で楽しく家族で話題にして下さるようにおもしろおかしく、こちら側も楽しんで取り組んでいます。常連の主婦にとっては「今日はどんなPOPがあるかな」と訪れる楽しみになっています。買い物をきっかけに、世代を超えた会話や地域交流が広がっているのです。

POP」が柱、楽しむことが力に
「うちの一番の柱はPOPです。商品そのもの以上に、POPでお客さまを楽しませたいんです」波多野店長はそう語ります。失敗しても構わない、まずは挑戦してみる――この姿勢を従業員に徹底し、自由に発想できる環境をつくってきました。
特に女性スタッフが書くPOPには、主婦ならではの実感がこもります。
「『子どもが全部食べちゃった』という一言が、多くのお客様の共感を呼ぶんです」スタッフが楽しみながら工夫を重ねることで、「スーパーランドらしさ」が自然と生まれているのです。
スーパーで楽しくこども店長体験!
人気の取り組みが「こども店長」。こちらもセミナーがきっかけで他の店舗で行っていたことを取り入れました。
体験を希望されたお子さんが売り場に立ってお仕事に挑戦します。冷凍庫の中に入って商品管理を見学したり、ラベル貼りに挑戦したりと、普段できないことを体験します。例えば、「急にスタッフがおやすみになってしまったので、ここお願いできるかな?」とリアルな現場づくりもします。最初は緊張しながらも、次第に笑顔がこぼれ「大変だけど楽しい!」と声が上がります。波多野店長は「食育とは、食べ物の背景を知ること」と語り、形の揃わない野菜や生産者の思いを伝える場にしています。
体験した親御さんやおばあちゃん、おじいちゃんが一緒に買い物に来て下さるようになって、家庭での会話が増えたという声もあり、地域の子どもたちの学びにつながっています。

地域の生活を支えるお店の商品を取り扱う移動販売車「とくし丸」
買物困難者支援と併せて、地域の見守り活動にも貢献できればと行っています。
地域の支援活動になればと思っています。

地域との縁が商品を運ぶ
スーパーランドには、地元や近隣の名産品が数多く並びます。
一宮の角八のあんころもち、南房総地域しか店頭販売されていない木村ピーナッツの商品…。その多くは、店長自身が出会いや縁を通じて仕入れてきたものです。
「人との縁の中で“これはいい”と思ったものを見つけ、その思いを伝えるのが役目だと思っています。スーパーは単に物を売る場ではなく、生産者やメーカーの声をお客様に届ける場所なんです」
実際に、いすみ市内の小中学校の給食に提供している有機のお野菜が学校給食用の規格のサイズに足りず「余ってしまい困っている」と農家さんから連絡がありましたので畑に行ってお話を聞いたところ、いてもたってもいられず、袋を取りにお店に帰り、ふたたび畑へ。自分で収穫しお店に持ち帰り店頭販売したところ、すぐに完売し農家さんに喜んでいただけたなんてこともありました。こちらとしても、地元のお野菜をいつもお店に納品してくださる農家さんのお役に立てたことがなによりも嬉しかったですし、お互いに相乗効果になれればと思っています。

従業員さんから波多野店長は人とのご縁を大切にする方で、そこから商品を扱うことになるパターンが多いと聞きました。

私たち小売業は、生産者とか、メーカー様の思いとか言葉を、お客様に伝える役目だと思います。「人との縁」の中で品物を見つけて、その価値を伝えます。

また、幸いなことに同じ業種やそうでない業種に仲間がたくさんいます。情報交換しあったり教えてくださったりするので助かっています。思えば何かに悩んだタイミングでいつも誰かが解決に導いてくださっています。「人との縁」をこれからも大事にしていきたいです。

これからのスーパーランド

最後に、これからの展望を尋ねました。
「キーワードは“ストーリー”ですね。商品一つひとつに背景があり、それを知って食べてもらうことで共感が生まれる。地域の人たちが集まり、価値を語り合える場になれたらと思います」

「失敗してもいい。同じ失敗を繰り返さなければ学びになる」——波多野店長がスタッフに伝える言葉です。従業員が楽しみ、子どもが学び、地域が支える。その循環がスーパーランドを特別な場所にしています。
単なるスーパーマーケットではなく、地域の暮らしに寄り添う拠点として。スーパーランドはいすみ市の人々とともに、これからも新しい物語を紡いでいきます。

毎日の買い物が楽しい体験に変わる。スーパーランドは、地域とともに進化を続ける“物語のあるスーパー”でした。

関連記事

PAGE TOP